ママの手料理 Ⅲ
(えっ!?)


誰も予想だにしていなかった展開に、私は目と口を最大限に見開き。


「まじで…、?」


銀ちゃんの顔をまじまじと見つめた大也が、拍子抜けした顔でぽつりと呟いた。



「ああ、俺はいつだって本気だ。お前らに伝えたとばかり思ってたわ、すまねぇな」


声のトーンを一切変えずに謝罪の言葉を述べた彼は、おもむろにイヤホンに手を当てて。




「伊織、聞いてたか?解体作業はどうなってる」




今までが怒涛の展開過ぎて、存在すら忘れかけていた情報屋の名前を呼んだ。



『…銀河に言われた通りにやってるよ。爆発まで残り3分18秒。解体成功まで、残り25%』


そして数秒の間が空き、イヤホンから流れ込んできたのは紛れもないあの人の声。



「伊織、……!」



たった数秒、されど数秒。


彼の声は私の頭の中で清らかなメロディーを作り出し、希望に満ち溢れた言葉を紡いでは消えていく。


一体何年もの間、私は彼の声を聞いていなかっただろう。


面会に行きたくても拒否され、内緒で手紙を渡そうとしても琥珀に見透かされ。


幾度もの冬を乗り越えてきた私は、以前に比べたら何かが変わったかもしれない。


けれど、聞いているだけで安心する伊織の優しく低い声は、3年前と何も変わってはいなかった。
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