ママの手料理 Ⅲ
「うんっ…今まで本当にありがとう、皆大好きだよ」


35,34…、と数字が減る中、私も感謝の気持ちを言葉にする。


こんなに緊迫した状況なのに、不思議と涙は流れなかった。



「おい壱、俺が悪かったって言ってたって、お前の兄貴に伝えとけ」


「は?お前ら喧嘩でもしてたのかよ。アホらし」


「いや、俺は売られた喧嘩を買っただけだ」


「なら、仁に非があるだろ。俺が代わりに謝るよ、すまねぇな」


部屋の奥では琥珀と壱さんがそんな会話を繰り広げ、ひひっ、と薄く笑みを浮かべていて。


そのままおもむろにこちらに近付いてきた琥珀は、どかりと大也の横に腰を下ろした。


「おいお前ら、俺も混ぜろよ」


『23,22…』


意志とは関係なしに減っていく数字、それと同時に、大也が目を見開いて自分の真横を向いた。


「えっ…何それ、最後の最後にかまちょとか萌えるんだけど」


抑えきれない程の満面の笑みを浮かべた大也は、片手で武器が括り付けられた彼の左手を握った。


「解体成功するって信じてるけどさ…、死んだらガチで結婚しようね」


今まで何百回も聞いたその告白に、琥珀は鼻で笑って返答する。




「好きにしろよ」




「えっ」


「そーだね……って、え!?」
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