ママの手料理 Ⅲ
それはつまり、イエスと捉えて良いのか。


思わず声が出てしまった私と同様、大也は大声で奇声を発した。


「ちょっ、ちょっと待ってよ…。何でこんなギリギリでそんな事…、やだなぁ、もっと前にOKしてくれれば良かったのに」


ようやく願いが叶って余程嬉しいのか、白金の髪の持ち主は瞬く間に目を潤ませた。




…そうだよね、大也はずっとこの瞬間を待ち侘びていたんだもんね。


夜な夜な公園に行って声を押し殺して泣く程、私の元に相談に来る程、伊織や他の人がその恋心に気付いてしまう程。


彼の琥珀を想う気持ちは誰よりも大きくて、1度たりとも揺らぎはしなかった。



「“あの世”限定だからな」


「何それっ、死ぬの楽しみになっちゃったじゃん!まあ、生きて動いてる琥珀の方が好きではあるけども」


(琥珀、イケメン過ぎる…!)


ずっと大也からの猛烈アタックを振り続けてきたくせに、この展開は胸アツだ。



でももしかしたら琥珀は、大也が持つ死に対する恐怖を少しでも拭ってあげようと、わざとその台詞を言ったのかもしれない。


そしてきっと、自らの持つ死に対する恐怖を少しでも和らげる為に。



「ねえ、」


その真偽を確かめたくなって思わず口を開くと、


「シッ」


私が言いたい事が伝わったのか、琥珀は片眉を上げて私の言葉を阻止する。
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