ママの手料理 Ⅲ
次の瞬間、彼はいつも通りの優しい笑みを顔に浮かべていて、きっと見間違いだと判断した私はウキウキしながら人生初リムジンに乗り込んだ。



「こんなに広い車内だと、逆に何していいか分からなくなるね」


「そうだな」


私達を乗せたリムジンは、すぐにホテルへ向けて出発した。


自意識過剰すぎてあまり何かを褒めようとはしない仁さんも、流石のリムジンには脱帽したらしく感嘆の声をあげていて、それに琥珀が相槌を打つ。


「めっちゃ快適…」


広々とした車内を見回し、隣に座る大也の肩に頭を乗せながら私はぽつりと零した。



運転席と客席の間はバーテーションによって仕切られており、私達が座っているのは車の両サイド。


真ん中にはテーブル、運転席の背もたれに小さな備え付けテレビとスピーカーがある。


そのスピーカーからはゆったりとしたクラシックが流れてきていて、テーブルには小さな香水が置かれており、何とも素敵な柑橘系の香りが漂っている。


窓からはアメリカらしい巨大ビルや自然の多い公園等を眺める事ができ、歩道を歩く外国人は全員モデルにしか見えない。


…何だこの空間は、何だアメリカという国は、何なんだ湊さんの家の財力は。



初っ端からVIPな待遇を受け、最早天国ではないか!
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