ママの手料理 Ⅲ
｢…何言ってんの｣


至近距離で聞こえてきたその声は、溢れ出す吐息と共に私の鼓膜を揺らす。


｢俺、｣


視界に入り込んだ白銀の髪が揺れ、大也が私の肩を掴んでぎゅっと自分の方へ引き寄せる。










｢…俺、この髪大っ嫌いだから｣










瞬間、腕を組んで目を瞑っていたはずの仁さんの目がぱちりと開いた。



(ぁ、…)


今、私は大也の中にある地雷を踏んだのだろうか。


そういえば、ずっと前に彼は病気で髪の色が白くなったと言っていた気がする。


目を開けたまま微動だにしない仁さんの姿をぼんやり捉えながら、私は謝ろうと決心を固めたものの。


｢…なーんちゃって！嘘だよーん｣


小声ではあるものの、人気投票No.1ホストの声が明らかに明るくなったから、私は安心して頬を緩めた。


｢びっくりしたでしょー？俺嘘上手いからさぁ、ひひひっ｣


耳がくすぐったくて、大也の膝をペチンと叩くと、


｢あ、ごめんごめん。…じゃあ俺寝るわ、おやすみー｣


空気を読んだ彼はすぐに会話を終わらせてくれた。



そのまま、疲れていた私達は速攻で夢の世界へと入って行き。


仁さんと湊さん、そして航海だけが、クラシックの波に乗りながら現実世界に残されていた。
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