ママの手料理 Ⅲ
先程、彼が自分の両親を“お母様”“お父様”と呼んでいた事から推測するに、湊さんはかなり由緒ある家系に生を授かったのだろう。


それなのに何があって怪盗mirageを結成したのか、つくづく謎は深まるばかり。



「…なるほど、これが家族の感動の再会ってやつですか。僕には小さい時そんな相手居ませんでしたけどね」


斜め前から聞こえてくる皮肉めいた感想に、私は思わず首を捻った。


「うーん、確かにジェームズさん達は感動の再会っぽいけど…湊さん達はそうでもなさそうじゃない?」


「…まあ、それはそうですけど」


大きめに切られたステーキを一口で口の中に放り込んだ航海は、くちゃくちゃとそれを噛みながら口を開く。


「でも、元々この家族って本当の家族がいなくて嫌いで、生き方が分からない者達が集結して出来上がってるわけじゃないですか。大也さんと仁さんは養護園から出るっていう目的で養子縁組をしたから分かりますけど、湊さんは……」


一旦そこで言葉を切った彼は、水を一気に流し込んだ。


「家族、思いっきり居るじゃないですか」



その時の航海の顔を、私は見る事が出来なかった。


その言葉が外界へと飛び出してきた時、それは湊さんに対する羨みと妬みを含んでいたから。


彼がそう言うという事は、今まで湊さんは私はおろか他の人にも自分の家族について一言も知らせていなかった事になる。
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