ママの手料理 Ⅲ
心配になって尋ねてみたものの、彼は意識が何処かに飛んでしまったのか答えてくれる様子はなく。


代わりに、同じ場所に居た仁さんなら何か知っているかもと思ってそちらを見たものの、


「何?僕の顔に何かついてる?…ああなるほど、僕が絶世のイケメンだからか」


彼は当たり障りのない笑顔を浮かべながらナルシスト発言を投下してきて、最早話にならなかった。




夜。


「夜景見ないの?」


「ちょっと疲れちゃって…明日の夜見ることにします」


「そう」


寝室に戻って軽くシャワーを浴びた私達は、ベッドにごろりと横になっていた。


寝室にも窓はあり、仁さんが私の為にカーテンを閉めずにいてくれたけれど、正直夜景なんて少ししか見れていない。


何故なら、夕飯の時の大也の変貌ぶりに未だに困惑しているから。



此処が日本だったら、あの様な状態の大也は即座にいつもの公園に向かって精神統一をするだろう。


この3年で彼があそこに行く頻度は格段に減ったものの、行っていないと言えば嘘になる。


元々底抜けの明るさを持ち、誰よりもひょうきんな彼の心がガラスで出来ている事くらい、嫌という程理解している。


(何があったんだろ…)


彼の所に行って話だけでも聞いてやりたいけれど、何せこちらも疲れているし眠い。
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