君が紡ぐ初恋を、独り占めしたい。

「さ、さっきはどうもありがとう」


「困ってるように見えたから放っておけなかっただけ。余計なお節介だったらごめんなさい」


「全然、お節介なんかじゃないよ。本当は私がキッパリと断るべきなのに」


「あの状況だと拒否するのも難しいと思うから仕方ないわよ。それじゃ」


「ま、待って。私は星谷 桜藍って言うんですけど、あなたの名前は……?」


一瞬、黒髪の女の子の顔が曇る。


少し躊躇いながら口を開いた。


「……羽衣石 朱莉(ういし あかり)」


「わぁ、綺麗な名前だね!」


思ったことをそのまま伝えただけ。


でも、羽衣石さんは意外だったのか目を見開いた。


「私のこと、知らない?」


「うん。1年の時に別のクラスだった子は、まだ名前を覚えていなくて」


「違うの、そういうことじゃないから気にしないで。じゃあ、私は職員室に行かないといけないから」


クルリと背を向けて足早に去っていく羽衣石さん。


何か的外れなことを言ってしまったんだろうか。


不思議に思っていると、後ろからポンと肩を軽く叩かれた。


< 12 / 56 >

この作品をシェア

pagetop