君が紡ぐ初恋を、独り占めしたい。
「余計なことを勝手にペラペラ喋るな」
「あー、悪い。つい口が……」
覆っていた手を引き剥がした真柴くんは苦笑いを浮かべる。
「それから、星谷を下の名前で呼ぶのはやめろよ。初対面なんだから、いくらなんでも馴れ馴れしいだろ」
朝丘くんって礼儀正しい人なんだなぁ。
そう思ったけれど、何故か真柴くんはニヤリと意味深に笑う。
「わざわざ迂回させないでストレートに言えばいいのに。那青は大抵のことは器用にこなせるけど、こういう方面は不器用だよな」
「っていうか、そろそろ自分の教室に行った方がいいんじゃね?4組の女子たち、メグが来るのを今か今かと待ってるだろうから」
朝丘くんは真柴くんの腕をグイグイと引っ張って4組の方へ歩いていく。
「おい、やめろって。まだ桜藍ちゃんと少ししか話せてないのに」
「だから気安く名前を呼ぶなって言ってるだろ」
仲良しなんだな、あの二人。
ちょっとしたコントを見ているみたい。
私はほのぼのとした気持ちで2組の教室に戻った。