君が紡ぐ初恋を、独り占めしたい。

「余計なことを勝手にペラペラ喋るな」


「あー、悪い。つい口が……」


覆っていた手を引き剥がした真柴くんは苦笑いを浮かべる。


「それから、星谷を下の名前で呼ぶのはやめろよ。初対面なんだから、いくらなんでも馴れ馴れしいだろ」


朝丘くんって礼儀正しい人なんだなぁ。


そう思ったけれど、何故か真柴くんはニヤリと意味深に笑う。


「わざわざ迂回させないでストレートに言えばいいのに。那青は大抵のことは器用にこなせるけど、こういう方面は不器用だよな」


「っていうか、そろそろ自分の教室に行った方がいいんじゃね?4組の女子たち、メグが来るのを今か今かと待ってるだろうから」


朝丘くんは真柴くんの腕をグイグイと引っ張って4組の方へ歩いていく。


「おい、やめろって。まだ桜藍ちゃんと少ししか話せてないのに」


「だから気安く名前を呼ぶなって言ってるだろ」


仲良しなんだな、あの二人。


ちょっとしたコントを見ているみたい。


私はほのぼのとした気持ちで2組の教室に戻った。


< 16 / 56 >

この作品をシェア

pagetop