君が紡ぐ初恋を、独り占めしたい。
やっぱり明日にしよう。
絶賛練習中なら話せないし、練習終わりだと疲れているだろうから迷惑になるかもしれない。
グラウンドに行くのをやめた私は、昇降口へと向かう。
下駄箱のところで靴を履いていると、真柴くんがやって来た。
「桜藍ちゃ……じゃなくて、星谷さんも今帰り?」
「うん。あの、私は名前呼びでも構わないけど」
「そうしたいところなんだけどさ、那青がうるさいから」
「昨日も思ったけど、朝丘くんは礼儀を重んじる人なんだね」
真柴くんは、なぜかキョトンとした顔で私を見た後。
プッと吹き出すように笑った。
「星谷さんって面白いね」
「えっ?」
「あれは礼儀の問題じゃないと思うよ」
他に何か理由があるってこと?
首を傾げると、真柴くんは私の手を握った。
「まあ、その話は置いといて。俺と一緒に帰らない?星谷さんがどんな女の子か、もっと知りたいし」
「そ、そう言えば朝丘くんは?」
「マネージャーに呼びとめられて、何か話してたからまだ来ないと……」
「誰が来ないって?」
振り向いた視線の先には、不機嫌そうに真柴くんを見ている朝丘くんがいた。