君が紡ぐ初恋を、独り占めしたい。

「正解!」


「良かった…。正直、あまり自信がなかったんだ。当時は朝丘くんの顔をハッキリと見ていなかったから」


「でもさ、こんなに早く思い出して貰えるとは思ってなかったから嬉しいよ」


「今日ね、ツツジの様子を見ようと思って体育館裏に立ち寄った時に、パッと頭の中に光景が蘇ってきたんだ」


あっ、また身振り手振りを交えた説明しちゃってる。


癖を直す難しさを痛感しながら、私は深く頭を下げた。


「朝丘くん、本当にごめんなさい」


「思い出せないことは誰にでもあるし、そんなに何回も謝らなくても大丈夫だよ」


「ううん、そうじゃないの。実は朝丘くんと出会った日のこと、忘れたくて記憶の端っこに追いやってたんだ」


「えっ」


こんなこと、いきなり聞かされたら驚くのも当然だよね。


「私、朝丘くんは関わっちゃいけない危ない人だと思っていたんだ。体育館裏に呼び出されるっていうのが、小学生の頃に友達の家で見た不良ドラマを思い出しちゃって、良いイメージが無くて……」


学園で敵対する二つの不良グループが、癪にさわることがある度に相手を呼び出していた場所が体育館裏で。


殴る蹴るの喧嘩シーンは、あまりの怖さに泣いてしまうほどだった。


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