君が紡ぐ初恋を、独り占めしたい。

俺が恋に落ちるなんて


[那青side]


「それじゃあ朝丘くん、また明日」


「おう、またな!」


交差点の横断歩道を渡って、だんだん小さくなっていく星谷の後ろ姿を見つめる。


視界から完全にいなくなった後、俺はゆっくり歩き始めた。


本当は家まで送っていきたかったけど、さすがに攻めすぎだよな。


家が近所ならともかく、だいぶ離れているみたいだし。


でも、短時間とは言え星谷と一緒に帰れただけでも嬉しい。


それから握手。


星谷の手、小さくて可愛かったな。


自分の手のひらを見ながら口元が緩む。


笑みをこぼしたまま帰宅すると、ちょうど2階から降りてきた妹の丹衣菜(にいな)と鉢合わせした。


「お兄ちゃん、なんでそんなにニヤニヤしてんの。キモいんだけど」


「マジで!?」


「思わず引くレベル」


不審者でも見ているかのような顔。


相変わらず俺に対する態度が冷たい。


小さい頃はいつも俺のあとについてきて甘えていたけど、そんな丹衣菜も今や中2だもんな。


兄と関わるのがウザく感じる時期なのかもしれないけど地味に傷つく。


苦笑いしながら階段を上って、自分の部屋に入った。


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