君が紡ぐ初恋を、独り占めしたい。
驚いた女の子がこちらに振り向く。
栗色の長い髪を後ろで一つに束ねて結んでいて、素朴な大人しい雰囲気の子だ。
『何か用ですか?』
『あのさ、君ってイニシャルがM.Oだったりする?』
やっぱり関係ない子だったか。
そう思いながらも、気まずさゆえに分かりきったことを確認してしまった。
『違います』
『そ、そっか。いきなり変なこと聞いてごめん』
目線を下に向けたまま、無表情の女の子は何も喋らない。
なんか不審人物扱いされてる?
『俺、その人に呼び出されてここに来たんだけど……まだいないみたいだな』
慌てて理由を説明する。
待っていることを強調するためにキョロキョロと辺りを見回すと、女の子は近くに置いてあった透明なゴミ袋を持って立ち上がった。
『何を揉めてるのか私には関係ないですけど、殴り合いの喧嘩になったとしても、ここにあるツツジの木たちに危害は加えないで下さい』
『は、はい……』
冷たい声に戸惑いながら返事をすると、女の子は逃げるようにいなくなってしまった。