君が紡ぐ初恋を、独り占めしたい。
何言ってんだ、あの子。
なぜに喧嘩?
そんなこと、俺は一言も口にしてないんだけど。
首を傾げながら、先ほどの会話のやり取りを頭の中で再生した。
あっ、もしかして。
“呼び出されて”っていう部分!?
どういう事情で呼び出されたのか詳細は何も話していないから、彼女は物騒な意味合いで解釈したんだ、きっと。
どうりで警戒していたわけだ。
疑問が解決した途端、俺は吹き出すように笑ってしまった。
なるほどな、そういう見方もあるのか。
っていうか、あの子の中で俺は殴り合いの喧嘩をしそうなヤバい奴に見えてたってことだよな。
今まで女子たちにそんな風に見られたことないから新鮮すぎるんだけど。
ー*ー*ー*ー*ー
この時はまだ、珍しい捉え方をする星谷のことを面白いと感じただけ。
また校内で会ったら話してみたいなと仄かに思った程度だった。
でも、きっと心の奥には好意が芽生えていたんだと思う。
それを自覚したのは10月。
彼女に再び会った、あの日だった。