君が紡ぐ初恋を、独り占めしたい。

数冊の本を抱えて立っていたのは、夏休み前に体育館裏で出会ったあの女の子。


まさかこんな形で再会するとは思ってもみなくて驚いてしまった。


『私の顔に何かついてますか?』


『あっ、いや……えっと利用者カードの提示をお願いしたくて』


何やってんだ、俺。


ジッと見ていれば不審がられるに決まってんだろ。


ただでさえ、体育館裏で会った時に印象悪くしているんだから気を付けないと。


『そうだ、ごめんなさい』


女の子は慌てながら利用者カードと本をカウンター上に置いた。


すぐにカードに視線を注ぐ。


そこには生徒氏名とフリガナが印字されているからだ。


星谷 桜藍って言うのか。


綺麗な名前だな。


『あの、どうしたんですか?』


手続きを中断していれば、彼女が不思議に思うのは当然だ。


『花に関する本ばかりだから、花が好きなのかなと思って』


まさか名前を知ることが出来たのが嬉しいなんて言えず誤魔化すと、星谷はニコッと可愛らしく笑った。


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