君が紡ぐ初恋を、独り占めしたい。
『はい、大好きです』
彼女は花が好きだと言っただけ。
頭ではちゃんと分かっているはずなのに。
どうして今、心臓がドクンと跳ねたんだろう。
顔が熱くなってるんだろう。
借りた本を嬉しそうにスクバに入れて図書室を出ていく星谷を目で追った。
『今、誰か女の子来てた!?』
雨音がうるさくても女子の声だけは耳に届くんだな、コイツ。
『本を借りて、もう出て行ったよ』
『なーんだ、残念。っていうかさ……』
奥の本棚からこちらにやって来たメグは、カウンター越しに俺の顔を覗き込んできた。
『那青、なんで顔赤くなってんの?』
『少し蒸し暑いからじゃないか?』
手で顔を仰ぐ仕草をすると、メグは意味深な笑みを浮かべる。
『もしかして、本を借りに来た女の子に一目惚れでもした?』
『……そんなわけないだろ。俺はメグと違って女子に全く興味ないし』
『今まではそうだとしても、価値観なんて何かのキッカケで変わったりするだろ?』
カウンターに頬杖をついたメグは真っ直ぐな目で俺を見た。