君が紡ぐ初恋を、独り占めしたい。
*Pink gladiolus*

見えない努力


「桜藍、ごめんね。お母さん、再来週のフラワーフェスティバルの日に仕事が入って行けなくなっちゃったの」


新しいクラスの雰囲気にも慣れてきた4月下旬のある日。


二人で晩ご飯を食べている時に、お母さんが気まずそうな表情で話を切り出した。


毎年、5月の二週目の土日に麗ヶ丘(うららがおか)という場所で開催されるフラワーフェスティバル。


広大な敷地の中で、たくさんの花を堪能できる至福のイベントだ。


「急な仕事だから仕方ないよ。休日出勤、大変だと思うけど頑張って!」


今年も一緒に行くのを楽しみにしてたから少し残念だけど、こういう年もあるよね。


「ありがとう。それでね、チケットのことなんだけど」


「そう言えば、今年はレストランのランチ付きのチケットとれたんだったよね」


「そうなのよ。キャンセルも勿体ないし、園芸部の子とか誘って一緒に行ってみたらどうかなと思って」


園芸部の子かぁ。


友達というより部活仲間っていう感じで、あまり深い付き合いはしてないけど……


一緒にイベントに行けば花のことで話は盛り上がるだろうし、思いきって誰か誘ってみようかな。


< 44 / 56 >

この作品をシェア

pagetop