君が紡ぐ初恋を、独り占めしたい。
私がバイトに入ったばかりの頃。
色々と丁寧に優しく教えてくれたのが津々見さんだった。
やむを得ない事情だろうからどうしようもないけど、一緒に仕事できるのが残り僅かだなんて寂しいな。
沈んだ気持ちでそんなことをずっと考えていたせいか、気付けばいつもの帰り道と違う道を歩いていた私。
遠回りにはなるけど、まあいっか。
普段あまり通らない道を歩くのって新鮮な感じだし。
街灯に照らされながら住宅街を進んでいくと、突き当たりに大きな公園が見えてきた。
そう言えば、この敷地内を通り抜ければいつもの帰り道に近い道へ出られた気が。
ふと閃いた私は公園に入った。
帰宅する会社員、ジョギングをする人たち。
殆ど人気がないのかと思いきや、意外と人に遭遇する。
通り抜けで利用している人がわりと多いんだなぁと思っていた時。
私の右足にトンと何かが当たった感覚がして。
ビックリして視線を落としてみると、そこにはサッカーボールが転がっていた。