君が紡ぐ初恋を、独り占めしたい。
「全然、そんなことないよ」
「えっ?」
「俺さ、サッカー部に入ったのは高校生になってからなんだ。他の部員は小学生の頃からやってる奴らばかり」
「じゃあ、真柴くんも?」
「アイツは5才の頃からサッカーやってるから、俺とは比べものにならないぐらい上手いよ」
へぇ、そうなんだ。
「みんなと同じ練習量だと足りなくて、こんな風に部活が終わった後に一人でサッカーしてるんだ。じゃないと置いていかれるから」
雲の隙間から差し込む月の光で照らされた朝丘くんの顔は、何ともいえない複雑な色を滲ませていた。
「こそ練だなんてカッコ悪いよな」
「……そうかな?」
眉を八の字に下げて笑っていた朝丘くんは、私の言葉にキョトンとした表情を浮かべた。
「後れをとらないように自主練を頑張って、コツコツ努力を重ねている朝丘くんのこと、私はカッコいいと思うよ」
意外だったのだろうか。
朝丘くんは何度も瞬きを繰り返した後、照れくさそうに視線を逸らした。