没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
サクサクパイの中の甘いカスタードクリームと甘酸っぱいリンゴの相性が抜群で、シナモンの香りが食欲を増進させる。

いつも食べ終えると、もうひとつ買えばよかったと思うほどの大好物だ。

「焼き立てはどのパンかしら。アップルシナモンパイだったらいいのに。レーズンのハードパンも美味しいし、私がメロンパンが食べたいと言ったらメニューに加えてくれたのよ。メロンが入っていないのになんでその名前?と不思議がられたわね。明日の朝食用にクルミパンも買うわ。もっちりメープルパンとシナモンロール、ベーコンとコーンのピザ風も捨てがたいし、クロワッサンもサクサクふわふわで……」

胸の前で指を組み合わせたオデットは、ゴクンと喉を鳴らすとジェラールに頭を下げた。

「ジェイさんすみませんが、五分ほど店番をお願いします」

コロンベーカリーは遠方から買いに来る客もいて、なかなかの人気店。

ブルノの帰宅を待っていたらアップルシナモンパイが売り切れてしまうかもしれない。

しかしドアへと勇んで歩きだしたら、肩を掴まれ引き留められた。

やる気に満ちた顔のジェラールが頼もしく胸を叩く。

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