没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
四角い顔に大きな鼻と厚い唇が特徴的で、中背ながら横幅があるため存在感が強い。

ジェラールの父である国王が即位する前から側近を務め、今も右腕として政務に多大な影響を与えている。

家督は継いでいないもののインペラ公爵の弟なので財力、発言力はかなりのものだ。

ジェラールは顔をしかめたくなるのをこらえた。

老婆心ならぬ老爺心だと言って、事あるごとに口出ししてくる宰相を煩わしく思っていた。

「インペラ宰相ごきげんよう。すみませんがこれから会議がありますので急いでいます」

「では急いで話しましょう。ほんの一分、お耳を拝借」

ジェラールの迷惑を気にせず、インペラ宰相が話しだす。

「少し前にグスマン伯爵家をお訪ねになったと聞きましたぞ」

それは三か月ほど前に、ルビーのついた銀のスプーンの件で訪問したことを言っているのだろう。

「それがなにか?」

「なにかではございません。グスマン伯爵の夫人の実家はレオポルド派の貴族。まさか忘れていたとは言いますまい」

諫めるような言い方に、ジェラールはムッとした。

(いつまで俺をガキ扱いするつもりだ)

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