没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
人には色んな事情があるものだと思いつつ、オデットはドア口まで客を見送りカウンターに戻った。
時刻は十五時。
ブルノは奥の作業部屋にこもっていて、足踏み研磨機の音が聞こえてくる。
(紅茶を淹れて休憩しましょうと声をかけようかな。お茶菓子は昨日買ったアップルパイがまだ残って……あ、寝る前に私が全部食べちゃったんだ。買いにいかないと)
そう思ったらドアベルが鳴り、若い女性が入ってきた。
飴色のストレートの長い髪を束ねて三角巾をかぶり、エプロンドレスを着た女性は快活そうな笑みをオデットに向けた。
「そろそろ休憩でしょ。一緒にティータイムにしようと思って。いい?」
「もちろん、大歓迎よ」
小柄なオデットより十センチほど上背でスラリとした体形の彼女は、ルネ・コロン。
ひとつ年上の十八歳だ。
カルダタンの右隣のコロンベーカリーのひとり娘で、両親と彼女との家族経営である。
ルネは持ってきたバスケットをカウンターに置き、かぶせていた布巾を取った。
「差し入れだよ」
すると甘いバターの香りが漂うクッキーがどっさり入っていて、オデットは目を輝かせた。
時刻は十五時。
ブルノは奥の作業部屋にこもっていて、足踏み研磨機の音が聞こえてくる。
(紅茶を淹れて休憩しましょうと声をかけようかな。お茶菓子は昨日買ったアップルパイがまだ残って……あ、寝る前に私が全部食べちゃったんだ。買いにいかないと)
そう思ったらドアベルが鳴り、若い女性が入ってきた。
飴色のストレートの長い髪を束ねて三角巾をかぶり、エプロンドレスを着た女性は快活そうな笑みをオデットに向けた。
「そろそろ休憩でしょ。一緒にティータイムにしようと思って。いい?」
「もちろん、大歓迎よ」
小柄なオデットより十センチほど上背でスラリとした体形の彼女は、ルネ・コロン。
ひとつ年上の十八歳だ。
カルダタンの右隣のコロンベーカリーのひとり娘で、両親と彼女との家族経営である。
ルネは持ってきたバスケットをカウンターに置き、かぶせていた布巾を取った。
「差し入れだよ」
すると甘いバターの香りが漂うクッキーがどっさり入っていて、オデットは目を輝かせた。