没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
次に白い紙の上にのせて光源にあて、カラーと透明度を表すクラリティを評価する。

微笑したジェラールが頬杖をつき、てきぱきと作業を進めるオデットを見つめている。

「今日も急に雰囲気が変わるんだな。君がどんな女性なのかもっと知りたくなる。惹かれる理由はそこにあるのかもしれない」

「すみません。集中したいので黙っていてもらえますか」

「すまない……」

口説かれているとも気づかず、オデットは素早く鑑定を終えて慎重にダイヤモンドをネックレスに戻し、それからやっと笑みを向けた。

「カラーはD。クラリティはインタナリーフローレス。インクルージョンはなくほぼ無色透明で非常に価値が高いダイヤです。それにプラチナチェーンのお値段を乗せまして、査定額は二千百五十万ゼニーになります」

鑑定を終えたオデットはネックレスを箱に戻してジェラールの前に置いた。

(石にはまだ誰の想いも染み込んでいなかったわ。最近、新品で買ったものかしら)

プラチナチェーンは細く女性用なので、誰かへのプレゼントだろうとオデットは推測した。

贈られた女性の喜びが、このダイヤモンドに移るのを想像して頬を緩める。

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