没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
アランは母親との対面を聞かされずに呼び寄せられたようで、驚いていた。

「あなたが僕のお母さん?」

嬉しそうに問いかける彼に、シュルビアは両手で顔を覆って膝から崩れ落ちた。

「アランを置いていくべきじゃなかった。不幸にしてごめんなさい。こんな私が母親を名乗るのは許されないわ……」

嗚咽を漏らすシュルビアを、オデットはおろおろと見ている。

(親子の再会は笑顔あふれるものだと思っていたのに、シュルビアさんを傷つけてしまったわ。どうしましょう)

余計なことをした気がして申し訳なく思ったが、アランが駆け寄りシュルビアの肩を抱いた。

「お母さん泣かないで。僕は会えて嬉しいよ。生んでくれてありがとう」

アランは許しているようだが、シュルビアは呻くように息子に謝り続ける。

それを遮ったのは伯爵夫人だ。

「シュルビアが謝る必要はないわ。過ちがあると言うなら、妊娠した時に私に相談しなかったことくらいよ。決して悪いようにしなかったのに」

先ほどまでショックに青ざめていた夫人は今、怒りに顔をしかめている。

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