甘くなって、惑わせたい。
それに織くんは小さく「はぁ」とため息をついた。


「そんな訳ないでしょ?


もうこんな時間だし、送ってくから用意して。」


そう急かすように言った織くん。


なによ、少しは焦ってくれたっていいのにな~。



「はいはい~。

さっさと帰りますよーだっ!」


少し皮肉に言って支度をする。


準備している途中、チラッと見えた織くんのお顔は真っ赤っか。


何故かと不思議に思いながらも支度をした。


少しぐらい私に興味もってくれたっていいのに。


そんなこと考えながら気付けば織くんの家の前。


はぁ、今日も織くんとは進展ゼロだ………


外は少し風が吹いていて寒かった。


「寒いね~。」


「………うん。」


照れ臭そうにいう織くん。

それにつられ、何だか私まで恥ずかしくなった。


薄着で来たせいか、肌に冷たく風が吹く。


「花小、これ。」


そう言って織くんが渡したのは織くんが着ていた上着。


そんな光景にキュンと胸がときめいた。


「で、でも、織くんが………!」


何故かとても慌てている私。


それに織くんは当然かのように言った。


「花小が風邪ひくと、困るの俺だし。


その…………寂しい……っていうか。」


恥ずかしいのかそっぽを向いて投げやりに言った織くん。


そんな織くんの思いに私は焦る。


うそうそ…………な、なんで私がこんな恥ずかしいの…………っ?


本当は、私が織くんをキュンとさせるはず、なのにっ…………


「ほら、早く、受け取って。」


「う、うん………ありがと……っ。」


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