甘くなって、惑わせたい。
織くんの匂いがたくさんする上着。


それを受け取った瞬間、私の心は幸福で満たされた。


それと同時に頬がカァッと熱が伝わり、熱くなった。


それを隠すように下を向く。


それから織くんの上着を羽織った。

優しいぬくもりに包まれる。


「花小。そっち危ない。」


そう言うと車線側に織くんが立った。


「あ、ありがと……う………」


小さくそう言うとチラッと織くんの方を見る。


「………っ!こ、こっち見ないで。」


そう言う織くんの顔はやっぱり真っ赤。


それに私まできっと真っ赤。

私が織くんを惑わすのに…………。


これじゃあ、私が───────っ。


何とかして織くんを……………


たくさん考えても答えは見つからない。


そうしている内にいつの間にか私の家の前まで来ていた。


「ばいばい。」


どこか寂しげな様子の織くん。

ど、どうしよう……………


織くんにやられてばっかじゃっ………。


「じゃあ、また明日。」


そう言うと私に背を向けて歩き出した。


か、帰っちゃう…………っ!


「し、織くんっ!」


気付けばそんな風に呼び止めていた。


「なに?どうしたの?」


そんな織くんの返事に困った。


か、勝手に呼び止めてたし…………どうしよう……………


何にも思い付かない私は奥の手を考えた。



あんなのここじゃ恥ずかしい、けど…………っ


織くんのもとまで駆け寄る。


チュッ。


そんなリップ音をたてて私は織くんの頬にキスをした。


「ご、ごめん………それじゃ!」


恥ずかしさで満たされた私は急いでて家に入った。


入った瞬間にドアの前でストンと座った。


「やっちゃっ………た」


織くん………どんな顔してるかな………


いきなりこんなことして嫌われてないよね…………?


嫌なことばかりが脳を過る。


こんなことならやんなきゃ良かった……………

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