甘くなって、惑わせたい。
このままじゃ、俺だけ弄ばれてる………。


あくまで平常心、平常心。



何とか興奮しきっている心を宥め、いつもの“俺”を取り戻す。


はぁっと小さくため息をつく。


「そんな訳ないでしょ?


もうこんな時間だし、送ってくから用意して。」


俺にしてはとても頑張ったと思う。


可愛いのは大前提として、こんなことを考えているなんて………花小は一体どんな生活をしてるんだ……………


「はいはい~。


さっさと帰りますよーだっ!」


プクッと頬を膨らませると立ち上がり支度を始める花小。



そんな姿が愛らしすぎてきっと顔はどうしようもなく赤いだろう。


俺もなんとなく準備をするとせっせと支度をしている花小を見た。


残念そうな恥ずかしいような、そんな感じ。


それからしばらくして、玄関を出て気付けば俺の家の前。


「寒いね~。」


そう言う花小は何だか大人な女性の顔。


なんだよ、花小ってこんなに色気染みてるのかよ。


「………うん。」


照れ臭いのはあんまり隠せていなかった返事。


花小を横目で見るととても寒そう。


俺は一応、と持ってきた上着を花小に渡そうとする。

「花小、これ。」


そう言って上着を差し出す。


「で、でも、織くんが………!」


申し訳ないのか強がる花小。


それすらもいとおしく感じる。


そうして無意識に口が開いた。

「花小が風邪ひくと、困るの俺だし。


その…………寂しい……って言うか。」


途中で恥ずかしくなり反対の方向を見る。


なんでこんなこと言ってんだよ………


それでも気になったのは花小の気持ち。


さすがにこんなこと言ってたらひくよな…………。


「ほら、早く、受け取って。」


恥ずかしさを圧し殺して上着を差し出す。


「う、うん………ありがと……っ。」


声からしてこれは照れてる………っ?

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