さよなら、愛してる〈不知火の姫 外伝〉
 まあでも、こいつらの言う通りだ。下手したら大変な事になっていたのが、これだけ平和に済んだのは喜ぶ所だろ。

 あとは藍乃を回収して、亜賀座の奴はどうしようかな。とりあえず雲竜の二人に引き渡すか……

 後の段取りを考えながら藍乃の方へ行くと、あいつは気が抜けたのかその場にへたり込んでいた。

 亜賀座はまだぐったりしていたが、仲間に助け起こされている。

 藍乃のそばへしゃがんで少しうつむいてる顔を覗くと、涙でぐしゃぐしゃ。その顔が泣き虫だった小学生の頃を思い出させ、思わず笑ってしまった。


「――なんで、笑うの……? すっごく怖かったんだから……!」

「ちゃんと助けに来ただろ」

「うん……ごめん」

「別に、謝らなくていい」


 藍乃の頭をくしゃくしゃっと撫でた。いつもは髪が乱れるって嫌がるのに、今日は大人しく撫でられてる。

 その姿が、たまらなく愛しい……


「凪……たくさん、迷惑かけてごめんね」

「謝ってばっかだな、珍しい」


 神妙な雰囲気が嫌で、ワザと茶化した。そうしたら泣き顔のまま、怒ってぷくっと頬を膨らませる。


「もう! 人が真剣に話してるのに茶化さないで!」

「そうか?」


 そう言いながらまた頭を撫でた。今度は嫌がって、手を振り払われてしまった。
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