さよなら、愛してる〈不知火の姫 外伝〉
一度だけ、奈央に藍乃の様子をきいてみたが、渡米の準備で忙しいらしいという事しか分からなかった。藍乃は友達の奈央にもあまり連絡をとってないようだ。
でも……ちゃんと、移植する事にしたんだな。
それに少し安堵する。
そして半ばヤケクソ気味に夏を楽しみつくし、気がつけばもう夏休みもあと三日で終わろうとしていた。
その日は朝から、各自夏休みの宿題を持ち寄っての宿題会。暴走族がみんなで宿題なんてばかばかしいが、これは副総長の弘人が指揮をとっている。
俺の赤点をも許さない奴だ。夏休みの宿題を提出しないなんて言語道断、といった所なんだろう。
だから倉庫に集まって、みんなでワーワー言いながらやっていた。
中二階の幹部室で弘人に叱られながら数学の問題を解いていると、下から部下が一人上がってきた。いつも倉庫の出入り口付近でブラブラしてる生島だ。
生島は幹部室の出入り口まで来ると、言いにくそうにモジモジ。見かねて声を掛けた。
「――どうした、生島。何か用か?」
「総長、あの……藍乃さんが下に来ています。総長に会いたいって……」
――藍乃?!
突然の名前に心臓が跳ねた。
藍乃とは、あれからずっと会っていない。そのままアメリカへ行ってしまうと思っていた。
一体、何をしに来たのか……
でも……ちゃんと、移植する事にしたんだな。
それに少し安堵する。
そして半ばヤケクソ気味に夏を楽しみつくし、気がつけばもう夏休みもあと三日で終わろうとしていた。
その日は朝から、各自夏休みの宿題を持ち寄っての宿題会。暴走族がみんなで宿題なんてばかばかしいが、これは副総長の弘人が指揮をとっている。
俺の赤点をも許さない奴だ。夏休みの宿題を提出しないなんて言語道断、といった所なんだろう。
だから倉庫に集まって、みんなでワーワー言いながらやっていた。
中二階の幹部室で弘人に叱られながら数学の問題を解いていると、下から部下が一人上がってきた。いつも倉庫の出入り口付近でブラブラしてる生島だ。
生島は幹部室の出入り口まで来ると、言いにくそうにモジモジ。見かねて声を掛けた。
「――どうした、生島。何か用か?」
「総長、あの……藍乃さんが下に来ています。総長に会いたいって……」
――藍乃?!
突然の名前に心臓が跳ねた。
藍乃とは、あれからずっと会っていない。そのままアメリカへ行ってしまうと思っていた。
一体、何をしに来たのか……