さよなら、愛してる〈不知火の姫 外伝〉
「――あーいたいた! 凪さ~ん!!」
「――総長!」
藍乃の声を遮るように、二人が同時に喋る声がした。こちらへ近づいて来る声の方へ振り返ると、そこには不知火特攻隊長の二人の姿が。
不知火の特攻隊長の二人は同じ高校二年の双子だ。ニコニコとひとが良さそうに笑いながら歩いて来るのが、兄の海藤 風吹。そして、その隣を並んで歩き、何かを持っているのが弟の響生。
響生が片手に持っていたのが人間だという事に気が付くのに、そう時間はかからなかった。首根っこを掴まれたその人間は、怯えているのか意識が無いのか、ぐったりとしている。
冷静沈着に見えて実は力でねじ伏せるのが響生。何も考えていなさそうで実は戦略家なのが風吹。二人ともひょろりと背が高く、双子だからよく似た風貌。でも性格は正反対だ。
そして不知火の狂った双璧と呼ばれ恐れられている。
「総長! このような輩が倉庫の周りをうろうろしてたんですが……」
響生はそう言いながら手にしていたそれを俺の前へ投げ捨てた。それ、はヒッという小さな悲鳴をあげ、地面にひれ伏すようにちじこまっている。
「何処のヤツだ?」
不知火にとって、こんなのは日常茶飯事だ。唯一無二の不知火を潰して、族のトップとして名を上げたいというのがいつもちょろちょろしている。