さよなら、愛してる〈不知火の姫 外伝〉


「最近になってこの辺で名を上げ始めた、わりと小規模な族らしいんだけど……」


 なるほど、ポッと出てきた一発屋的な族か。通りで知らないわけだ。


「で? その『雲竜』ってのが何なんだ」

「一昨日、俺らが海に行った時に風吹と響生が取り逃がした男。そいつ、どうやらその雲竜の所のヤツみたいだ」


 そういえばあの後、弘人にあのコソ泥みたいなヤツが何者なのか調べるように言ったんだった。流石にコイツ、仕事が早い。


「ふうん……雲竜、か……」

「きな臭くなってきたな。先手必勝で()っちゃうか? 何処を根城にしてるのかなんて、すぐ分かる」


 まるでゲームを楽しむ様にそう言った弘人を、片手を振って制す。


「下っ端一人を偵察によこすような小者だ。放っておいても問題ねえだろ」


 ――しかし、その判断が甘かった事を、その後俺は思い知る事になった。
















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