さよなら、愛してる〈不知火の姫 外伝〉

 どうして? なんの為に?!

 そういえば……あいつ、俺に何か隠してる事があるっぽかった。何か言おうとして止めてしまう。最近はそんな事を繰り返していたようだった。


「……あいつ……藍乃は、今日はここへ来るのか?」

「護衛に付いてるやつらから病院終わったら連絡来る事になってるけど……」


 弘人がそう言ったのと同時に携帯が鳴った。応対している弘人の受け答えの雰囲気で、それが護衛のやつからなのが分かる。

 携帯を切ると弘人は言った。


「今日は藍乃ちゃんはここへは来ない。病院の後、母親と一緒に既に家に帰ったらしい」

「そうか……」


 少し……ホッとしたような、そうでないような。


「なあ、凪。今回の雲竜の襲撃の場所、仲間じゃないと知らないような所で待ち伏せされたりしてるんだ。こんな事考えたくないけど、もしかして、内通者がいるんじゃないかって……」


 内通者? それが藍乃かもしれないって?

 そんなばかな。

 でも、そう考えてしまう弘人の気持ちも分かる……


「――分かった。俺が今日、藍乃の家へ行って話をする。それまで待ってくれ」


 誰も、意義を唱える者はいなかった。
















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