さよなら、愛してる〈不知火の姫 外伝〉


「明日から一週間、全教科だからな! 最後の三日はまとめのテスト!」

「いや、(たけ)ちゃん! 俺まだ出るって言ってないし!」

「『武田先生』と呼べっていつも言ってるだろ! それに……お前に拒否権があると思うのか? これはお前の救済措置なんだぞ! 付き合って下さる先生方に感謝しろ!」


 担任の武田先生の強い押しに成す術無く。俺はせっかくの夏休み、初日から一週間の補習授業を受ける事になってしまった。

 こんな時は暴走族の総長という肩書なんて、何の役にも立たない。







 次の日、夏休み初日だというのに俺は、渋々とまた学校へやって来た。今日から二十四時間遊びまくれる夏休みだというのに、どうしてこんな所にいるんだろう……疑問しか浮かばない。

 昨夜電話でその話を副総長で親友でもある弘人(ひろと)に話したら、爆笑された。弘人も同じ学校で隣のクラスだ。そして同じように不知火で暴れてたはずなのに、そんな補習予定は無いらしい。

 どうやらあいつは俺と違って、要領良くやっていたみたいだ。

 昔からあいつはそういう所が抜群に上手い。俺や周りが足止めをされているのを横目に、するりするりとかわしながらいつの間にか一抜(いちぬ)けしているのだ。
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