さよなら、愛してる〈不知火の姫 外伝〉
 勝手に雲竜との対決を決めてしまったから、倉庫に戻ると俺は弘人に散々なじられた。もっと準備をしてからとか、相手を調べてとか、ごちゃごちゃ言っていたが、俺は悪手だとは思わない。

 勢いで決めてしまったのは認めるが、これ以上時間をかけても被害が広がるばかりだろ。


「――それにしたって、藍乃ちゃんはどうするんだよ!」

「どうするも、こうするもねぇだろ……あいつが自分であっちに行ったんだ。そういう事だ……!」


 もう疑い、じゃない。確証だ……


 俺の言葉に倉庫中が静まり返ってしまった。こんな時、筒抜けなのは便利でもあるが不便だ。隠し事も出来やしない。


「――では総長、俺たちは準備を始めます。行きますよ、風吹」

「うん~響生。まずは、戦略から考えようか~」


 風吹と響生はそう言うと、下に集まっている配下たちに支持を出す為、幹部室から出て行った。

 残されたのは俺と、弘人。あとは奈央が出入口で心配そうに俺を見ている。

 ……奈央も、裏切られたんだ。

 藍乃とは友達だったはずだ。いつも二人でわちゃわちゃしてて、楽しそうだった。


「……凪先輩、あのね」


 奈央はふいに話始めた。ガサツでお喋りな奈央も、この件に対してはずっと沈黙していたのに。
< 59 / 138 >

この作品をシェア

pagetop