さよなら、愛してる〈不知火の姫 外伝〉


「ちょっと……先生に呼ばれて……」


 この階にある、生徒指導室に来たという。


「生徒指導室? 何だ? お前、何したんだ?」


 俺の問いに、藍乃は何も答えず少し俯いて首を振った。

 言いたくなさそうな藍乃にもっと強く追及しようとした時、担任の武田先生が教室へ入って来た。そして補習授業を始めるからと藍乃を教室から追い出してしまい、話はうやむや。

 少し様子のおかしかった藍乃は気になったが、武田先生に席に着けとすごまれて結局そのままになってしまった。


 ……まあ、いいか。


 どうせ用事が済んだら、あいつも不知火がたまり場にしている倉庫へ行くだろうし。その時に聞けばいい。







 補習授業は昼になって俺の腹が鳴るまで、ろくに休憩も無くみっちりと行われた。

 驚いた事に、生徒は俺の他には誰もいなく、完全にマンツーマンの個人授業状態。まあ、俺の為の救済措置だと言われてたからある程度予想はしてたけど。

 でも、これじゃあ絶対にサボれない……

 明日も必ず来いと武田先生に念を押され、俺はしょんぼりと教室を後にした。


 学校のすぐ近くのパーキングにバイクを止めていた。駐車場は屋外だったから、夏の太陽にシートは焼かれ熱気を持っていた。だけど、尻を火傷しそうになりながらそれにまたがると、さっきまでの沈んだ気持ちが晴れて行く。

 俺はすぐにバイクを走らせた。
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