ティアドール
「うわあああっ!」

落とし穴に落ちたと思った数秒後、コウは謎の液体に包まれていた。

(こ、これは…)

真っ暗な視界。

だけど、何故か…懐かしかった。

まるで、生まれる前…母親の胎内にいるような感じ。

(母さん…)

コウの脳裏に、台所に立つ母親の姿が浮かんだ。

包丁を持つ手を止め、笑顔で振り返る時、母親のブロンドの髪がゆっくりと流れた。





「馬鹿な!ハッチが開いた」

オリジナルフィギュアの腹の上で起き上がった整備員の1人は、目を丸くした。

「起動するぞ!」

もう1人は、フィギュアの変化に気付いた。

頭部についている髪の毛に見える物体が、金色に輝き出したからだ。

「た、退避!」

フィギュアの腹が波打ちだし、立つことが困難になる前に、2人の整備員は梯子に向かって走り出した。

「ま、まさか」

上に上がろうとしていた整備員も慌てて、下に下り出した。

「動くのか…ついに!」

コンテナの下にいた白髭の軍人は、目を見開いた後、にやりと笑った。

「最後の運命が!」




「貰うぞ!オリジナルフィギュアを!」

河村のガルの攻撃を潜り抜けた黄金の鳥は、基地内を旋回すると、格納庫内に飛び込もうとした。

「行かせるか!」

格納庫前にいた真也は、高周波ブレードを横凪ぎに振るい、黄金の鳥の進路を塞ごうとした。

しかし、その動きで、黄金の鳥を止めることはできなかった。

真也のブシを、トニーのノアが狙撃した。

「くっ!」

バランスを崩すブシ。

「少佐!」

通信機から聞こえるトニーの声に、フェーンは笑った。

「すまんな。トニー」

機体を垂直にすると、ブシの横をすり抜け、黄金の鳥は格納庫内に突入した。

足を出しブレーキをかけると、スピードを殺し、機体を安定させたフェーンは、絶句した。

「オリジナルフィギュアが起動している!?」

しかし、その事実よりも、立ち上がったオリジナルフィギュアの姿に、驚いていた。

「ぜ、全裸の女!?」



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