ティアドール
その理由は、レクイエムにあった。

たった一機によって、世界中は壊滅状態になった。

そのレクイエムと同じような性能を持つオリジナルフィギュアが、五機。

その抑止力は、核をこえていた。

さらに、昔の日本軍とは違い、無闇に領土を広めることをせず、台湾などの近隣の島国だけを統合し、食料確保をすると、エネルギーも石油ではなく、日本近海に眠るバイオエネルギーを使っていた。

あくまでも、日本に生まれ、日本で育ったものだけが、食っていける世界。

変に他人を入れると、まとまらない。

その考えは、鎖国ではなく、日本以外の排除を意味していた。




「ところで、兄さん」

男は、フェーンに顔を向け、

「オリジナルフィギュアは、どうだった?」

にこっと微笑んだ。

「うん?」

フェーンは、デッキ内から男に目線を変えた。

華奢な体に、大きな目は、女にしか見えないが…そうでないことを、フェーンは知っていた。

弟だからだ。

「レーン」

フェーンは、興味津々で輝いているレーンの瞳を見つめ、、口を開いたが、

「あれは…フィギュアではないように思った…。いや、もしかしたら…あれこそが」

そのまま考え込んでしまった。

「フィギュアを食うフィギュアか」

レーンはそう言うと、手摺から離れ、背伸びをした。

「お、お前!どうして、それを」

慌てるフェーンを見て、レーンはクスッと笑った。

「珍しいね。兄さんが…。でも、確かに」

そして、デッキ内に並ぶフィギュア達に顔を向け、

「燃料がいらない分、便利だけど…」

少し目を細めた。

「レーン」

フェーンは、レーンの横顔に影のようなものを感じ、思わず近づこうとした。

「でも、トイレどうするのかな?食べたら、排出でしょ?」

すると、レーンは振り向き、にっと笑った。

「そ、それはだな…。食うのは、コアだけだから、すべて吸収されるそうだ」

狼狽えながらもこたえたフェーンに、レーンは笑った。

「ほんと、まじめだな。兄貴は」

そして、頭をかくと、フェーンに背を向け、歩き出した。


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