ティアドール
「やっと沖縄に来ましたよ。速水先生」

河村はぎゅっと拳を握り締め、軽く身を振るわした。

「先生のおっしゃっていたことが今、少しですが…理解できています」

そして、目を瞑った。

(ミトコンドリア・イブの再発を防ぐ)

そのまま疲れから、寝そうになった河村の耳に、緊張をようするサイレンの音が響いてきた。

慌てて、ベッドから飛び降りると、河村は部屋から廊下に出た。

「何が起こっている!?敵襲か!」

廊下を走っていると、次々に部屋から軍人が飛び出してきた。

「違う!敵襲ではない!」

宿舎から飛び出した河村の目に、格納庫から歩き出したオリジナルフィギュアの姿が映った。



「何事だ!」

管制室に飛び込んできた司令官は、ずっと眉を寄せていた。

「オリジナルが始動!どうやら、パイロットの意識に反応しているようです!」

オペレーターの報告に、さらに眉を寄せると、司令官は叫んだ。

「フィギュア部隊を発進させろ!」





「オリジナルフィギュアの捕獲かよ!」

第一格納庫に入ったパイロット達は、遠ざかっていくオリジナルフィギュアの背中を確認し、舌打ちした。

「今、動けるのはどれよ!」

パニックになっている格納庫内で、整備兵に向かって、パイロット達は叫んだ。

そんな中、フェーンによって半壊した第二格納庫に向かった河村は、先程機乗したガルに飛び乗った。

「パイロットが、オリジナルとシンクロしてしたら、勝てないが!」

河村は、ガルを始動させた。

「まだのはずだ!」

体を包む液体を感じながら、河村はオリジナルフィギュアの背中をとらえた。

「コーティングもしていない!裸のままで!」

背中のブースターと、両足につけられたホバーシステムを発動させ、ガルは一瞬で、オリジナルフィギュアとの距離を詰めた。

「さっさと戻りな!」

オリジナルフィギュアの肩を掴もうとした…その瞬間、

(触るな!)

河村の頭を声が響いた。

「な!」

絶句した河村の目に、振り向きながら、硬化しているオリジナルフィギュアの姿が映った。
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