ティアドール
「それに、新たなテラの空母が、あたし達の近くに停まっているのよ」

有馬は、レダーの画面を見つめた。

「恐らく目的は、あたし達と同じ」

「でしょうね」

河村は、ブシを瞬殺し、再び走り出したアルテミスを見つめた。

「とにかく、足止めしておいてね」

「もしかして、俺のフィギュアも出すのですか?」

このまま通信を切ろうとした有馬に、河村が訊いた。

「勿論よ。でも、いいじゃない!姉妹で、パイロット」

「よくない!」



その頃、有馬が指揮する空母の上に、二機のフィギュアが発進準備にかかっていた。


「お兄ちゃん。手こずってるみたいよ」

「仕方ないわね」

ユーテラスの中で、会話を交わすパイロット達。

「まったく、よく少尉になれたものね」

「仕方ないわ。家族の尻拭いは、私達で」

距離を考えて、ステルス型の戦闘機に運ばれるのではなく、足につけたスキー板のような推進機と、付属のブースターで海上を疾走するのだ。

「河村麗奈!行きます!」

「河村莉奈!行きます!」

二機のフィギュアは、カタパルトデッキから飛び出すと、しばらく空中を飛んだ後、海面に着地し、そのまま猛スピードで、沖縄基地向かって走り出した。



「わかりましたよ」

河村は深く溜め息をついてから、覚悟を決めた。

「足止めします」

接近戦は不利と見て、距離を取りながら足を狙い撃ちすることにします。

「破壊できなくても、バランス崩せるはず」

人型のフィギュアの弱点は、バランスである。

逃げるアルテミスの足下に、銃口を向け、乱射しながら、後を追うことにした。

「まったく!自国のフィギュアとやりあうなんて!」

銃弾が弾かれるのを見て、河村は破壊されたフェンスの柱を、ガルに取らせた。

「思ってなかったよ」

柱を曲げて、ブーメランにすると、アルテミスの足下に投げた。

すると、ブーメランと走っている足が絡まり、アルテミスは転倒した。

「やりますか!」

河村は、ガルのブースターを点火させた。
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