太陽のような君をもう一度
まだ春というには微妙な季節で、暖かい日差しが降り注いでいるのに風が吹くと肌寒い。

私の一歩先を歩いている日向君の背中を見つめる。

身長が伸びたのか、歩幅が大きい。



「おっ、見て。カラスノエンドウが咲いてるよ」

「あ、本当だ」



道端に小さな紫色の花があった。

そういえば今からちょうど一年前、日向君にこの花の名前を教えたな。



「よく覚えてるね……」

「もちろん。雑草かと思ってたから美玲にこの小さい花にも名前があるって教えてもらった時、衝撃だったもん」

「ふふっ、大袈裟」

「あっ、やっと笑った」



顔を覗き込まれて反射的にびくっと体が震える。

び、びっくりした。



私のその反応に日向君は一歩後ろに下がって距離を開けた。

その時に見えてしまった日向君の表情は明らかに傷ついていた。

……ずるいからそんな顔しないでほしい。



「ごめん。距離感が前のままで」

「ううん、びっくりしただけだから。あの、ちょっとだけ歩くの速い、かも」



本当はそんなことない。

日向君は普段よりもずっとゆっくり歩いている。

ずるいあなたに私が負けただけだ。



「だから服を少し、掴んでもいい?」

「服じゃなくてこっちにして」



指先がじゃれるように触れて、ゆっくりと指先の隙間を埋めるように握られる。

握られた手が熱くて、震えそう。



「そういえばまだ言ってなかった」



日向君が照れたようにこちらを見るから私は彼がこの先に言うことが分かってしまった。

お願い、言わないで。



「美玲、好きだよ」



どうして。

私を振ったのはそっちでしょう。


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