契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「結婚していた期間も短いし、なにより一緒に生活をしていたわけでもないんだよ? 再会してからも数回食事に行っただけだし、それにその……一番は私なんかに誠吾さんに好きになってもらえるほどの魅力があるのかが不安で」

 社内で誠吾さんのことを悪く言う人はいないし、優秀なパイロットとしか聞いたことがない。それにカッコよくて優しくて、照れくさくなることが苦手という意外な可愛い一面もある。

 笑った顔はすごく素敵だし、誠吾さん以上に魅力的な人とはこの先二度と出会えないとさえ思ってしまう。

 そんな人が秀でているものも特になく、容姿だって至って平凡。語学が堪能ということしか取り柄がない私を本当に好きになってくれたのかと、不安に思うのが当然じゃない?

 だけど真琴はそう思わないようで、矢継ぎ早に言った。

「なに言ってるの? 凪咲は充分魅力的だから! 優しくて一生懸命で素直で……! いいところを上げたらきりがないよ? 親友の私が言うんだからもっと自分に自信を持って」

「真琴……」

 ちょうど注文したカクテルと料理が運ばれてきて、テーブルに置かれたグラスを真琴は私に手渡した。
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