契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「それと逆の立場で考えてもみて。凪咲が何度も好きだと言い続けているのに、真田さんに信じてもらえなかったらどう思う?」

 答えは簡単。悲しくて苦しい。もし、誠吾さんも私が想像した気持ちになっていたら?

 考えれば考えるほど、誠吾さんに対して私はすごく申し訳ないことをしていたことに気づく。

「ありがとう、真琴。言ってくれなかったら私、また後悔するところだった」

 一度目の大きな後悔は、母のために軽はずみな行動に出たこと。そして二度目は、大切な人を無意識のうちに傷つけ続けるところだった。

「じゃあ……!」

「正直、誠吾さんがどんな反応をするか怖いけど、でも逃げずに自分の気持ちをちゃんと伝えてみる」

 自信をもって誠吾さんのことを好きと言えない理由を言葉にして説明することを考えると、どう伝えたらいいのかわからないほど難しい。
だけどきっと彼なら、どんなに拙い言葉でも最後まで聞いてくれるはず。

「うんうん、その意気だよ。……なにかあったらいつでも連絡して」

「ありがとう」

 どちらからともなく笑みが零れ、乾杯した。
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