契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 誠吾さんと向き合うことで、〝好きだと思う〟ではなく、〝好き〟とはっきり言えるようになりたい。そのためにも怖い、不安だと理由をつけて逃げずに彼と向き合おう。

 誠吾さんが戻ってきたら時間を作ってもらい、今の正直な思いを伝えよう。

 それからはお互いの仕事の愚痴や、最近真琴が気になっているという整備士の彼との話で盛り上がり、私も真琴も次の日が休みということでいつもよりお酒が進んだ。


 おかげで次の日はふたりして二日酔いとなり、一日家で寝て過ごした。

「さすがに一昨日は飲み過ぎたね」

「うん、昨日はずっと動けなかった」

 休み明けの朝、最寄り駅で偶然真琴と会い、ふたりで一緒に空港まで来た。少し早い時間ということもあって控室には私たち以外誰もいなかった。

 ロッカーで着替えを済ませ、ロッカーの鏡に映る自分の身なりを隅々までチェックする。メイクや髪は崩れていないか、スカーフはしっかりと結べているか、制服に汚れはついていないか。

 それらをすべて確認してからロッカーを閉めた。

「凪咲の今日の予定は?」

「私は午前中のフライトはないの。十四時五分発の中部国際空港の往復便のみなんだ」

「いいなぁ、羨ましい。私はみっちり四便だよ。あれ? じゃあ凪咲、こんなに早く来ることなかったんじゃないの?」

 控室を出て廊下を進みながら、真琴は不思議そうに聞いてきた。
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