契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「勉強したいなって思って。家じゃどうも集中できないからさ」

「それわかる! どうしても家だと気が散ってだらけちゃうんだよね」

 国際線の乗務に就いたら、今よりもっと多くの国籍のお客様を相手にすることになる。

 基本的な挨拶や会話程度だとしても、より多くの言葉を理解していれば、きっと自分の力になるはず。

「じゃあ凪咲、今日も一日頑張ろうね」

「うん、真琴もね」

 途中で真琴と別れ、自習室へと向かった。そこで午前中は勉強に励み、気づけばお昼近く。

 頭を使ったからか、いつもよりお腹が空いちゃった。

 キリがいいところで終わりにして、社員食堂へと向かう。お昼時ということもあって多くの社員が利用していた。

 午後の乗務に向けてがっつり食べたくなり、とんかつ定食を注文し、空いていた壁側の席に腰を下ろした。

 小さく手を合わせて、揚げたてのとんかつを口に頬張る。

 お腹が満たされていく中、列を挟んで後ろの席に誰かが座る気配を感じた。

「今日のビジネスのあの客、対応大変だったでしょ?」

「まぁね。でも慣れているから」

「さすが満里奈」
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