契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 聞き覚えのある声に箸を持つ手が止まる。そして気づかれないようにチラッと後ろを見ると、やっぱり金城さんをはじめとした三人の先輩たちだった。

 金城さんとひとりの先輩は私と背中合わせで座っているから大丈夫だろうけど、もうひとりが向き合って座っているから気づかれないかと落ち着かなくなる。

 それというのも誠吾さんとの噂がなくなっても、金城さんがいつも一緒にいる先輩たちグループには、なにかときつく当たられ続けていた。

 仕事上でわからないことがあれば、先輩たちにどうしても頼らざるを得ない。そこで金城さんたちと同じ便だと、教えてはくれるけれど冷たい態度と厳しい口調ばかり。

 とはいえ、決して業務に支障をきたすものではなく、お客様の前では普通に接してくる。

 そうなると自然と金城さんたちのことが苦手になってしまい、できるだけ社内では顔を合わせたくない。

挨拶をしたって返してはくれるけど素っ気ないし、気づかれないように早く食べてこの場から離れよう。

 そう決めて料理を口に運んでいると、ひとりの先輩は声を潜めた。

「ところで最近、真田さんとはどうなの?」

 誠吾さんの話が出て、再び箸が止まる。

「前にとっておきの作戦があるみたいに言っていなかった?」

「あーそれね。自信があったんだけどさ、意外とガードが固くて」

 ため息交じりに言いながら金城さんは愚痴を零していった。
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