契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「さすがは俺の娘だ、話が早い」

 父は私が今持っている現金を渡したら満足して帰っていった。

 すっかり日も暮れ、暗闇の中に離着陸する飛行機を眺めながら、どれくらいの時間が過ぎただろうか。

「きっとまた会いに来るんだろうな」

 渡したのはたった二万円。私にとっては大金だ。だけど父にとったら取るに足りないだろう。一ヶ月滞在すると言っていたし、その間来るはず。

 両親が離婚し、父と離れて母と新生活をスタートさせることができて、こうして自分の夢も叶えることができた。

 この先の未来は私も母も幸せしかないと思っていたのに……。

 一筋の涙が頬を伝い、鼻がツンとなる。

 そんな時、スマホが鳴った。メッセージの送り主は誠吾さんで、あと少しで仕事が終わるから会おうという内容だった。

「とてもじゃないけど、会えないよ」

 こんな姿を見せられないし、父のことも知られたくない。

 鼻を啜りながら、メッセージ文を打ち込んでいく。

【ごめんなさい、急用ができてしまいました】と返信して、席を立ち、足早に空港を後にした。
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