契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 大切な家族のおかげで俺は無事に夢を叶えることができたわけだが、その分、篤には随分と苦労をかけてしまっている。

 こうして彼が俺を訪ねてくる時は、決まってなにか嫌なことがあったり、迷うことがあったりする時だ。

 悩みの種は毎回仕事に関してで、役員と意見が食い違っているとか実に様々。今日はいったいどんな悩みを抱えて来たのだろうか。

 スープを作ってからパスタを茹で始める。お湯が沸くまでの間に切り出した。

「今日はなにがあったんだ?」

「えっ?」

「篤がうちに来てご飯を食べたいって言う時は、決まってなにかあった時だろ? 聞いてやるから話してみろ」

 すると篤は目を丸くさせた後、肩を落とした。

「兄さんにはお見通しか」

「気づかれたくなかったら、なにもない時にも家に来ればいい」

 そう言えば、篤は苦笑いした。

「そうだね。じゃあ兄さんに話してすっきりしちゃおうかな」

「あぁ、それがいい」

 沸騰したお湯に麺を入れて茹でながら、篤の話に耳を傾けた。
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