契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「そうだよね! 何回も好きって言っているのに、それだけじゃ一緒にいられないって言うんだ」

「じゃあ相手は篤の気持ちを受け入れてはいるんじゃないか? ただ、お前の立場を気にしているだけだろ」

「それが一番厄介じゃん。大勢の社員がいるんだ、彼女のためだけに今の地位から退くことはできないし、じいちゃんと父さんが守ってきた会社を俺も未来へ繋げていきたいよ」

 そうか、篤は俺の代わりに継ぐと決めたわけではないんだな。口には出したことなかったけど、篤の将来を俺のせいで潰してしまったのではないかと多少の罪悪感を抱いていた。

 でも篤には篤の思いがあり、決断したんだと思うと肩の荷が下りた気がした。

「だったら根気強く篤の気持ちを伝え続けるしかないだろ。……相手もお前を好いているなら、いつか必ず理解してくれると俺は思うけど。むしろさっきの話を聞かされたら、俺は篤のことを支えてやりたいと思う」

「兄さん……」

 誰かを好きになるってそういうことだろ? 相手の夢を応援してやりたいと思うはず。
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