契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 凪咲との出会いは運命だと信じている。最初は契約結婚など提案するつもりはなかった。だけど彼女の話を聞いて、どうにかして夢を叶えさせてやりたい、力になってやりたいって思ったんだ。

 彼女の人生の中で、俺との既婚歴が幸せの足枷にならないかと心配もしたが、凪咲と結婚したことを後悔したことはなかった。

彼女のおかげで最後に祖父に孝行することができたし、凪咲のために力になることもできたからだ。

 しかし互いの目的を達成し、離婚届に判を押したら別々の道を進んでいく。それは最初から決まっていたことなのに、離婚後はひどい喪失感に襲われた。

その理由に気づいていた。いや、気づいたのは祖父の葬儀の日かもしれない。

 ずっと泣けずにいた俺に凪咲は『家族の前でくらい、強がらないでください。……大切な人が亡くなったんです、悲しくないわけがないじゃないですか! 泣いてあげてください、おじいさんのためにも』と言ってくれた。

 この時に俺は恋に落ちたのかもしれない。

 両親が亡くなってから、家族は祖父と篤だけだった。でも彼女に家族だって言われて、妙に納得してしまったんだ。
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