契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 しかしそれは俺だけであって、凪咲は違ったんだ。

 少しも俺の気持ちが伝わっていなかったことがわかり、告白してもなかなか信じてもらえなかったことを思い出すと、伝わるように努力しようと決めた今でも気持ちは落ちる。

 すっかりパスタを食べる手が止まっていると、篤は俺の顔の前で手を振った。

「聞いてる? 兄さん」

「悪い、なに?」

 我に返り再びパスタを口に運ぶ。

「だからさ、俺が一肌脱ぐって言ってるの。三人で会おうよ、そこで俺がキューピッドになるからさ」

「篤に任せて大丈夫か?」

 からかい口調で言うと、篤はムッとなる。

「当たり前だろ? 俺に任せてよ」

 自信満々に篤は自分の胸を叩いた。

「わかったよ、じゃあ近々三人で会おう。あとで篤が空いている日を教えてくれ」
 ふたりを会わせたかったし、きっと凪咲も会いたいと言ってくれるだろう。

「了解! 凪咲ちゃんに会うの楽しみだな」

 俺も三人で会う日のことを想像したら、楽しみになった。
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